第6回セミナー 森林整備目標は森林所有者等に徹底しうるものとなっているか
講師:石塚森吉氏 (森林総合研究所 研究コーディネーター(温暖化影響研究担当))
12月16日(火)の第6回セミナーでは、石塚森吉氏(森林総合研究所 研究コーディネーター(温暖化影響研究担当))を講師にお迎えして、「森林整備目標は森林所有者等に徹底しうるものとなっているか」というテーマで基調講演をいただきました。さらに今回のセミナー課題に関連して、本会のアドバイザーから情報提供していただいた、「豊田市の森づくり構想」について相川委員から説明をいただきました。
その後、基調講演と相川委員の説明を踏まえて参加者の間でディスカッションを行いました。
基調講演及びディスカッションの要旨は次のとおりです。
(1) 石塚氏講演
森林が適切に保全、整備、利用されていくためには、それぞれの森林について、どのような森林にしていくべきか、どのような取り扱いをしていくべきかを明らかにする必要がある。このため、森林計画においては、森林整備の目標を定めるとともに、特に発揮すべき機能に応じ森林を区分(水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林)し、それに即した森林施業を進めることとしている。
しかしながら、現実には、森林の整備目標が、広く関係者の議論に取り上げられることはほとんどなく、例えば、森林の区分についても森林所有者にとっては、助成を受けるに当たっての有利、不利が問題にされるに留まり、行政主導の区分けに不満も少なくない。また、基本計画に示された森林区分毎の森林施業においても、例えば、水土保全林では「高齢級の森林への移行及び広葉樹導入により混交林化を図るなど複層林の造成を推進」とあり、水土保全林における針葉樹複層林の造成を助長しかねない表現になっている。さらに、水土保全林からの木材供給量を最も多く見込むなど、水土保全林と資源の循環利用林に期待する機能の区分に曖昧さが残されているように思われる。
一方、資源の循環利用林の森林施業においては、基本計画にあるように「経営目的等に応じた施業の適切な選択」が重要であるが、森林所有者が明確な経営目的や目標林型を立てられるような情報が整備されているかという問題がある。
森林整備目標や森林区分が機能されていくためには、どのような森林整備を進めていこうとしているかの意図を明確にするとともに、科学的根拠や社会的要請に基づき説得力を持つ公正な形で作られることが必要である。その上で、森林所有者等との真摯な議論を積み重ねてその理解を得ること、そのための費用対効果を最大にするような施策が必要である。ここでは、現在の森林・林業基本計画等に記されている森林整備目標や森林の区分を検証しつつ、森林整備目標、森林区分とその施業体系の関係をどのように作り上げていくべきかを考える。
(講師講演要旨から)
(2) ディスカッション
基調講演の後、参加者の間でディスカッションが行われましたが、主に次の項目が議論されました。
- 水土保全林、森と人との共生林、資源の循環利用林という3区分の適切性と実効性
- 長伐期施業のメリット・デメリット
- 長伐期林にした時の風害リスクとその予測
- 育成複層林などの定義が曖昧なため施業に反映しにくいという実態
- 針広混交林の位置づけ
- 複層林施業の難しさとリスク
- 広葉樹導入のための照度調節
- 短伐期・長伐期という分け方でなく、林分ごとの適正伐期という考えもある
- 機能区分と目標林型を現地にどう適用するか
- 費用対効果を考えた森林の機能区分と目標林型の設定
- メリハリがあり単純な機能区分と目標林型
- 目の前に森林があり、所有者など関係者の意思があると、具体的に森林をどう管理するかを考えやすい
- 基本構想を実現する段階では、所有者との対話が重要である
- 技術が確立されていない施業もあり、モニタリングを実施しながら改善していくという手法もある
- 森林を適切に配置するには、施業や経営を考えた指導と現地での所有者との対話が必要