第18回セミナー 今後の森林組合はいかにあるべきか
林 和弘 氏(長野県飯伊森林組合長)
◆セミナーの課題
言うまでもなく、地域森林管理の担い手として、森林組合は非常に重要である。しかし、その期待に必ずしも応えることができていないのが現状である。今後の森林組合はいかにあるべきかについて、提言をいただいた。
◆セミナーでの議論の整理
(1)森林組合の現状と課題
林氏が挙げた森林組合の一般的な課題は、以下の通りである。
一つ目は合併の問題である。森林組合の合併は相当程度進んだが、単に組織が大きくなっただけで、相乗効果が発揮できていない場合がほとんどであるという。林氏は、新しい系統を創るという発想が必要で、県森連の改革等と連動すべきであると述べた。
二つ目は運営の問題である。組合員のための事業運営ではなく、組織のための運営になっているケースがあると言う。
三つ目が経営の問題である。組合トップが、本当の意味で「経営」を担っているとは言いがたい状況があり、上記の運営の課題とも関連し、組合事業の企画・構想力に欠けていると林氏は指摘した。
また、森林組合の経営コンサルティングを行っているアドバイザーからは、公的な事業に依存する「成り行き経営」、プロフェッショナルの不在、理事会の機能不全、合併による長期の混乱等の課題が山積しているとの情報提供があった。
森林組合のこのような状況が続けば、組合員の世代交代に伴い組合員数が減少する恐れがあり、実際に飯伊森林組合では組合の脱退者が増えてきているという。
こうしたことから林氏は、組合本来の事業に注力することを基本方針とすべきとし、具体的に、飯伊森林組合では、森林管理委託事業(組合員が管理できない森林を組合が管理代行するもの)に取り組んでいる。今後は施業提案を通じて、事実上の所有と経営を分離した経営委託事業に向けて発展させていく予定とのことである。また、これらのビジョンを実現するために、飯伊森林組合では人材育成を重視するとともに、施業履歴や資源の状況等を把握し、データベース化を行っている。
(2) 行政との関係を問い直し、森林組合をあるべき方向へ誘導する
当日の議論の中では、今後の森林組合のあるべき姿を描くためには、まず行政との関係を整理する必要があるとの意見が多く出た。
まず、地域森林管理の担い手として期待される森林組合であるが、地域森林管理のグラウンドデザインを描き、役割分担に沿って公的資金を適切に配分するのは行政の役割であろう。現状の制度下では、市町村が森林・林業行政の実行部門を担うことになっているが、人材等の問題から市町村ではその役割を果たすに十分ではないという課題がある。
次に、森林組合が行政の発注する公的事業に依存してしまうという課題である。そこで、発表者や委員・アドバイザーから出た意見は、現場の作業班を分離・独立させ、森林組合は地域森林管理等のソフト部門に特化していくという方向性である。
そのためには、現状では現場経費(ハード部門)だけしか対象とならない補助金を、管理経費(ソフト部門)も対象とできるように変更するなどして、森林組合が地域森林管理に特化しても経営できる環境づくりが必要であろう。これが実現すれば、現場での実行事業が、民間企業同士の純粋な競争になるため、森林組合は地域森林管理業務に特化することができ、提案型集約化施業も加速することが期待される。
(文責:相川高信)